基本情報技術者試験 平成31年度 春期 午前 問65
ROI、ROA、投資、割引率についての問題。
--------------------------
平成31年度 春期 午前 問65
投資案件において、5 年間の投資効果を ROI(Return On Investiment)で評価した場合、四つの案件 a ~ d のうち、最も ROI が高いものはどれか。ここで、割引率は考慮しなくてもよいものとする。
a
年目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
利益 | 15 | 30 | 45 | 30 | 15 | |
投資額 | 100 |
b
年目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
利益 | 105 | 75 | 45 | 15 | 0 | |
投資額 | 200 |
c
年目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
利益 | 60 | 75 | 90 | 75 | 60 | |
投資額 | 300 |
d
年目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
利益 | 105 | 105 | 105 | 105 | 105 | |
投資額 | 400 |
ア a
イ b
ウ c
エ d
--------------------------
解説
ROI(Return On Investment)
ここでの Return は "利益"、Investiment は "投資" という意味になる。
投資に対してどれだけの利益があったかの割合を示すのが ROI である。
100円を投資して 200円の利益があれば、ROI = 利益 / 投資額 = 200 / 100 = 2 といった具合である。
似たような指標に ROA(Return On Assets)がある。
Asset は "資産" という意味。
その会社がもつ資産に対して利益がどれだけの割合であるかを示すのが ROA となる。
資産を手元に現金でため込むだけで有効活用していなければ ROA は低くなり、資産を設備とかで有効活用していれば ROA は高くなる。
ROI は効率のいい投資活動ができているかを知りたいときにみる。
ROA は資産を有効活用できているかを知りたいときにみる。
問題文では割引率という言葉がでてきているけど、長くなるので後に回す。
まずは各選択肢の ROI を計算してみる。
選択肢ア(a)の投資は以下の通り。
年目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
利益 | 15 | 30 | 45 | 30 | 15 | |
投資額 | 100 |
利益は 15 + 30 + 45 + 30 + 15 = 135 になる。
なので、ROI = 135 / 100 = 1.35 となる。
選択肢イ(b)の投資は以下の通り。
年目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
利益 | 105 | 75 | 45 | 15 | 0 | |
投資額 | 200 |
利益は 105 + 75 + 45 + 15 + 0 = 240 になる。
なので、ROI = 240 / 200 = 1.20 となる。
選択肢ウ(c)の投資は以下の通り。
年目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
利益 | 60 | 75 | 90 | 75 | 60 | |
投資額 | 300 |
利益は 60 + 75 + 90 + 75 + 60 = 360 になる。
なので、ROI = 360 / 300 = 1.20 となる。
選択肢エ(d)の投資は以下の通り。
年目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
利益 | 105 | 105 | 105 | 105 | 105 | |
投資額 | 400 |
利益は 105 + 105 + 105 + 105 + 105 = 525 になる。
なので、ROI = 525 / 400 = 1.3125 となる。
最も ROI が高い投資は選択肢ア(a)の 1.35 なので、選択肢アが正解。
以下は問題には関係ないけど、途中でてきた割引率について。
割引率は「"将来の価値" を "現在の価値" に換算する際に用いる率」のこと。
1 年後にもらえる 100 万円と、今もらえる 100 万円は同じ価値か?
と聞かれると、なんとなくでも今もらえる 100 万円の方が価値がありそうとなる。
それを定量的に表現するために割引率を使う。
具体的に数値で説明してみる。
年間に投資で 10% の利率でお金を増やせる人を考えてみる。
この人は今 100 万円あれば、1 年後には 10% 増やして 110 万円にすることができる。
なので、この人に上の質問をすれば、"今もらえる 100 万円" を確実に選ぶことになる。
(今 100 万円もらえば 1 年後に 110 万円にできるので、1 年後に 100 万円をもらうよりも当然価値がある)。
この人にとってはこの 10% が(年間の)割引率になる。
このとき、1 年後の 100 万円(将来の価値)を現在の価値に換算するには以下のようにする。
・(将来の価値)=(現在の価値)×( 1 + 割引率)なので、
・(現在の価値)=(将来の価値)/ ( 1 + 割引率)となり、
・(現在の価値)=(100万円) / ( 1 + 0.1 ) = 90.9090...
つまり、1 年後の 100 万円(将来の価値)は今の約 91 万円(現在の価値)と同じ価値ということ(この人にとっては、である)。
このようにして割引率を使って全てを現在の価値に換算できれば、どちらが得か(価値があるか)を定量的に判断できるようになる。
割引率は人や企業によって異なる。
投資とかをしていない人であればほぼ 0 だろうし、企業であれば事業の収益率などで考える。
この問題では割引率は考慮しなくてよいとある。
問題の選択肢 d の投資を例にしてみる。
年目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
利益 | 105 | 105 | 105 | 105 | 105 | |
投資額 | 400 |
割引率を考慮しないので 1 年目の 105 万円も 5 年目の 105 万円も同じ価値になる。
なので、ROI の分子(利益)を 105 + 105 + 105 + 105 + 105 = 525 として楽な計算ができていた。
もし割引率を 10% として考慮する問題であった場合、
・1 年目の 105 万円は現在の価値にすると 105 万円 / (1 + 0.1) ≒ 95.5 万円。
・2 年目の 105 万円は現在の価値にすると 105 万円 / (1 + 0.1)² ≒ 86.8 万円。
・3 年目の 105 万円は現在の価値にすると 105 万円 / (1 + 0.1)³ ≒ 78.9 万円。
・4 年目の 105 万円は現在の価値にすると 105 万円 / (1 + 0.1)⁴ ≒ 71.7 万円。
・5 年目の 105 万円は現在の価値にすると 105 万円 / (1 + 0.1)⁵ ≒ 65.2 万円。
として 5 年分を現在の価値に換算してから足し合わせて ROI の分子を計算することになるので、非常に面倒な問題となってしまう。
ちなみに割引率 10% で考慮した場合、
・a の投資の ROI ≒ 1.020
・b の投資の ROI ≒ 1.007
・c の投資の ROI ≒ 0.908
・d の投資の ROI ≒ 0.995
結局 a が一番 ROI が高かった(つまらない)。
前後の問題はこちら。